ここでは、フリーランスとして支払わなければならない主な税金について説明します。 納税は国民の義務ですが、そうは言っても、できるだけ節税したいと誰もが考えるでしょう。
しかし実態は、税の知識がないために納める必要のない税金を払っている人も大勢いるようです。 まずは税金の基本的な仕組みをしっかり理解しておきましょう!
個人事業主が納める税金は、主に以下の種類が挙げられます。
・所得税
・事業税
・住民税
・消費税
・国民健康保険税
これら税金に対し、それぞれ納付先と納税時期が定められています。
納税時期を把握していないと、想定外の支払いで事業存続が難しくなる、なんて恐ろしい話も。
それぞれの税金の納税スケジュールをまとめましたので、覚えておきましょう!
≫これで恐くない!納税スケジュール
次からはそれぞれの税金についての内容について説明します。
個人事業主にとっては必須の知識なので、必ず頭に入れておきましょう!
個人が得た所得に対して課せられる税金です。
所得税は、課税所得の額により大きく変わってきます。 課税所得は、次ように算出することができます。
また、「確定申告の基本」にて説明した、青色申告者(複式簿記による記帳)であれば、更に65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
そして、課税所得に応じて税率を求めます。
所得税の税率は課税所得の金額に応じて、5%から区分されています。
税率と税額控除は、以下の速算表をご参照ください。
例えば、年間の課税所得が500万円の場合…
課税所得5,000,000円 × 税率20% - 税額控除427,500円 = 所得税572,500円
…となります。
※1 必要経費について
「収入を得るために使用したお金」と定義されます。 個人事業主の必要経費で多い例としては、通信費、インターネット接続費、消耗品費、旅費交通費(ガソリン代は燃料費)、接待交際費、宣伝費などです。 また、前述の式から分かるとおり、課税の対象となる売上から差し引く金額なので、必要経費の計上は節税の基本といえます。
※2 所得控除について
納税者の税負担を軽減する措置であり、個々の生活事情によって該当する控除項目が違います。 控除の種類は、物的控除(社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険控除、など)と、人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、障害者控除など)の大きく2種類に区分されます。 尚、人的控除の一つ、基礎控除は納税者が無条件に差し引ける所得控除であり、その金額は38万円と定められています。(平成25年4月現在)
一方、税額控除は所得控除と違い、控除額がそのまま税額から差し引かれる控除です。 課税所得(税率)に応じて決められた控除額(上の早見表を参照)に加え、住宅借入金等特別控除や配当控除などを差し引くことができます。
~ 控除の見直し(平成29年12月) ~
平成30年度税制改正大綱により、平成32年分以後の基礎控除、青色申告特別控除の控除額見直しが示されました。 基礎控除においてはこれまでの38万円から10万円引上げられ、48万円となります。但し、合計所得金額2,400万円超 2,500万円以下の個人においては控除額が逓減、合計所得金額2,500万円超の個人においては基礎控除の適用なしとなります。
また、青色申告特別控除は、これまでの65万円の控除額が10万円引下げられ、55万円(条件を満たせば65万円)となります。
事業を営む個人の所得金額に課せられる税金で、前年の事業所得(収入から必要経費を引いた額)が290万円を超える場合に納税が必要となります。
所得税の確定申告を基に行政にて計算されるので、申告は必要ありません。
原則、8月、11月の2回に分けて納めますが、税額が1万円以下の人は8月に全額納めます。
事業税は以下のように計算することができます。
所得税で認められている「青色申告特別控除」は個人事業税では適用されません。
所得税にて適用している場合(既に差し引いている場合)は所得金額に加算する必要があります。
※3 各種控除について
事業税の控除は、事業主控除以外に以下のものがあります。
【損失の繰越控除】
事業により損失が生じたときは、その損失額を翌年以降3年以内の所得から差し引くことができます。
【被災事業用資産の損失の繰越控除】
震災や火災などの災害によって生じた資産の損失の金額で、その年に控除されなかった金額は、翌年以降3年以内の所得から差し引くことができます。
【事業用資産の譲渡損失の繰越控除】
事業用に使っていた車両や備品などを譲渡したために生じた損失額を控除することができます。
青色申告者はその損失額を翌年以降3年以内に生じた所得から差し引くことができます。
※4 事業主控除について
所得金額から一律290万円控除されます。
※5 税率について
税率は業種により異なります。(第1種、第3種事業は5%、第2種は4%) 詳しくは主税局ホームページでご確認ください。
≫東京都主税局ホームページ
お住まいの都道府県と市町村それぞれに納める地方税から成るものです。
事業税と同様に、確定申告を基に行政にて計算する税なので、自分で計算する必要はありません。
前年分の確定申告を元に、4~5月頃に各市町村から納税通知書が送付されてきますので、通知の内容に従い市役所、または郵便局、銀行などで納めます。
納付は、一括(納付期限は6月末)、または年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納めます。
納税額は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を基に決まり、翌年の6月から納めることになります。
したがって、その年に収入がない場合でも納めなくてはならないので注意が必要です。
住民税は以下のように計算することができます。
※6 所得控除について(所得税と住民税の違い)
所得税と同じく、所得額に対し控除できる金額です。考え方は所得税と同じですが、控除額や対象が異なります。 基本的に住民税の所得控除のほうが少ない金額となっています。
例)基礎控除:所得税の場合は38万円、住民税の場合は33万円
※7 税率について
課税所得に対して一律10%課税されます。 (都道府県民税4%、市区町村民税6%)
※8 税額控除について
様々な控除があり、人により大きく異なります。 詳しくは主税局ホームページでご確認ください。
≫東京都主税局ホームページ
※9 均等割について
都道府県民税と市町村民税から成るもので、収入に関係なく課税されます。 東京都の場合は、都民税 1,000円、市町村民税 3,000円ですが、 地域によっての多少の違いがあります。(平成25年12月現在)
~ 基礎控除の見直し(平成29年12月) ~
平成30年度税制改正大綱により、所得税と同様に住民税における基礎控除も見直しが示されました。 控除額はこれまでの33万円から10万円引上げられ、43万円となります。但し、合計所得金額2,400万円超 2,500万円以下の個人においては控除額が逓減、合計所得金額2,500万円超の個人においては基礎控除の適用なしとなります。
日本国内で行われるほとんどの取引に課せられる税金です。
個人事業主の場合は、取引の相手側から消費税を預かり、それらを計算して税務署へ納付しなければなりません。
但し、すべての個人事業主に納税義務があるわけではありません。
前々年の課税売上高が1000万円以上の場合は課税事業者となり、逆に、前々年の課税売上高が1000万円以下の場合には免税事業者となります。
次に納付税額の計算方法ですが、本則課税と簡易課税の2つの制度から選択できます。
●本則課税
実際に「預かった消費税額」と「支払った消費税額」から計算する
●簡易課税
「支払った消費税額」の代わりに、「預かった消費税額」にみなし仕入率(※10)を掛けて計算する
簡易課税制度で申告するには、前々年の課税売上高が5000万円以下であり、 「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に決算期開始前までに提出することが条件となります。
尚、一度、簡易課税の届出書を提出すると、原則2年間は変更できません。
どちらの制度を選択するかは、先を見越して決定することが重要です。
尚、課税事業者に限り、消費税の還付を受けられるケースがあります。
売上より仕入や諸経費の方が多い赤字事業の場合には、差額に対する税額が還付されます。
※10 みなし仕入率について
業種別に定められた控除の割合であり、支払った消費税のおおよその金額を算出する際に使用します。
尚、業種別のみなし仕入率は以下のとおり設定されています。
・第1種事業 卸売業など … 90%
・第2種事業 小売業など … 80%
・第3種事業 製造業など … 70%
・第4種事業 その他 … 60%
・第5種事業 サービス業など … 50%
個人事業主は国民健康保険への加入が義務づけられています。
国民健康保険税については、「保険・年金の基本」ページをご参照ください。
これら主要な税金のほかにも、様々な税金があります。
従業員を雇う場合の源泉所得税、仕事で所有している車を使用している場合の自動車税、その他にも固定資産税(償却資産税)など、人により課せられる税金は異なります。
中には必要経費(課税所得から差し引く額)として計上できるものが多くあるので、節税を試みるのであれば、一度、見直してみるとよいでしょう。