法人化すべきか...。 その見極めポイントは?


個人事業と法人の違いについては他のページで説明していますが、何を決め手に法人化するかどうか決めるのか、ここではその見極めポイントを説明します。

法人化すべきか?
法人化の見極めポイント

見極めポイントの1つとして代表的なのが、「どちらが納める税金が安くなるか?」という観点です。
まずは税金の基本的な仕組みですが、法人化し会社を設立することで経営者は次の2種類の税金を支払う義務が生じます。

1.会社に対し課せられる税金
・法人税、法人事業税、法人住民税、など

2.経営者自身に課せられる税金
・所得税、事業税、住民税、消費税、など

個人事業主であれば上記2の税金のみでしたが、法人化することにより納める税金が増えることになります。

このように納める税金の数だけ見ると、法人のほうが圧倒的に多いのですが、法人には個人事業よりも多くの節税特典があります。
よって、条件によっては法人のほうが税金が安くすむということがあります。

個人事業主と法人の税金イメージ

次は、もう少し具体的に見極めるポイントについて見ていきましょう。
税金を観点に見る場合、「課税所得」と「売上」が判断基準としてあげられます。


1.課税所得で判断する
簡単にいうと、課税所得が低いうちは個人事業、多くなれば法人が有利という考え方になります。
いくら以上だと有利かというと、家庭構造などにより変動するので一概にはいえませんが、一般的には、課税所得が400万円を超えた場合、個人事業主より法人のほうが有利と言われています。

課税所得の考え方ですが、個人事業主の場合は以下の通りです。
● 課税所得 = 収入 - 経費 - 所得控除

一方、法人の課税所得の考え方は以下の通りです。
● 課税所得 = 収入 - 経費 - 役員報酬

役員報酬は損金に算入することができ、課税所得から差し引くことができます。(算入の制約あり)
要するに役員報酬として計上すればするほど、会社の利益が減り、課税所得が少なくなるということになります。
しかし忘れてはいけないのが、経営者は給与所得として受け取る役員報酬に対しても課税されるということです。

だったら結局は同じでは?と感じるかもしれません。
しかし、法人の場合は、この給与所得から差し引く「給与所得控除」という特典があります。

給与所得控除の計算方法は、こちらのページをご参照ください。

法人のポイント

これらのことを前提に、個人と法人でどちらが得なのか、どのくらい差がでるのか、シミュレーションしてみましょう。

まずは、年間の売上が300万円だった場合の税金について見てみましょう。

売上300万円の場合の税金比較

このように、売上が低く、それにともない課税所得も低い場合だと法人より個人事業主のほうが税金が安くなることが分かります。

次は年間の売上が1000万円だった場合の税金について見てみましょう。

売上1000万円の場合の税金比較

先ほどの結果とは逆転し、今度は法人のほうが税金が安くなっていることが分かります。
このように、課税所得の金額により法人と個人事業でどちらが税金が安くなるのかが変わってきます。

尚、ここで紹介した計算結果は、利益の全額を役員報酬(経営者の給料)としている場合です。
会社の利益が0円になるため、利益にかかる法人税額もゼロになるとの仮定のもと計算しています。
しかし、実際には、役員報酬の金額は、事業年度の開始3カ月以内に決定しなければなりません。
よって、年度の始めから利益が0円になるよう予想し調整することは極めて難しいです。



2.売上で判断する
個人事業主として活動し、売上が1000万円を超えると消費税の課税事業者となり、その2年後から消費税の納税義務が生じます。
また、法人の場合は、法人化した最初の2年間は納税義務が免除されます。

これらのことから、個人事業で売上が1000万円に達し、その後も継続して売上を維持または増える見込みがある場合は、売上1000万円を超えて2年後に法人化することで、さらに2年間の納税免除が受けられる、ということになります。

法人化のタイミング

このように、納める税金の合計が安くなれば、法人化するメリットがあると判断できます。
但し、これまでの話しはあくまで税金面でどちらが得するかです。
法人化するかどうかで一番大切なのは経営者の描くビジョンであり、損得だけの問題ではありません。
この先、事業の規模を拡大したいのであれば、社会的信用という点だけでも法人化する意味は十分にあります。
税金面で多少損したとしても、未来への投資と考える懐の広さも経営者として必要な要素の一つです。

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